1999年フランスの旅 – 序章 –

ある日片付けをしているときに見つけた一冊の小さなノート。パラパラとめくってみたら25年前に二人でフランスに行った時の旅の日記帳でした。その日に行ったところ、食べたもの、買ったものなどを金額と共にメモ程度に書き留めてありました。懐かしいなと思いながら読んでいたらその時の記憶が蘇ったり、すっかり忘れていることがあったり。当時は円が強かったのもあるし日本以外はこの25年で普通にインフレしているのもあって1999年のフランスの物価のあまりの安さに目眩がします。

25年前の記録であり物価も社会情勢もすっかり変わっていて、今の時代に何かの参考になるというものでもないのですが、せっかく思い出したし自分自身のためにも記憶がすっかり消えてしまう前に書き起こしてみるのも面白いかなと思いました。
37日間の記録なのでかなり長いのですがこのメモと記憶を元に日記形式でつらつらと書いていきますので、もしご興味のある方は読んでみてくださいね。

二人でフランスを見て回る旅に出ることにしたのは1999年の秋。同僚として共に4年半勤めたフレンチレストランを退職し自分たちの店を開くと決意したことがきっかけでした。お店を持てばお金も時間もそうそう融通が効かず、フランスをふらふらと旅するなんて簡単にはできないだろうからその前にたっぷりと見てこようという思いでした。まだ結婚前でエリソンのシェフは当然まだシェフでもないので、この日記ではなんて書こうかなと悩んだのですが「私」と「H氏」と表記しますね。

H氏は山梨の高校卒業後は東京の専門学校でフランス料理を一年間学び、その後半年間は専門学校のフランス校に留学、さらに半年間は学校から派遣されフランスのレストランで単身住み込み研修を行いました。この旅の時点で帰国してから約4年半。フランス語はまあなんとか覚えているかも?行けばなんとかなるでしょーってな感じです。私はヨーロッパには個人旅行で2回行ったことがあるけどフランスはほぼお初な状態です。この旅の時点で私は24歳、H氏は25歳でした。
当時と今で全く違うのがインターネット事情でしょうか。携帯電話はそこそこ普及しつつあり個人でも持つ人がそう珍しくなくなってきた時代でしたが、まだMovaの時代でスマホなんてものはありません。すなわち旅先ではネット情報などにアクセスすることはできません。紙のガイドブックと辞書、公衆電話が頼みの綱です。
写真もフィルムカメラが当たり前。40枚撮りのフィルムを10本持っていって残り枚数を数えつつ撮影して現像は帰国してからです。現代とは隔世の感がありますね……。なのであんまりロクな写真がないのですが使えそうな写真があったら少しは載せてみます。

時は1999年。9.11同時多発テロより前の、世界がまだ牧歌的だった時代のお話です。ユーロはもう導入が決まってはいたけど流通はまだ始まっておらず通貨はフランスフランです。折しも円高が進み1ドル105円程度を付け、フランに対してもかなりの円高でした。帰ってきてから確認したら1フラン17円近くになっていて思った以上だったのですが、文中では1フラン18円で計算してあります。文中の物の価格を計算してみたら安さにびっくりしますよ。

1999年10月4日から11月10日まで36泊38日間。フランスだけを時計回りにだいたい一周。パリから入り、ランス、ストラスブール、ディジョン、ボーヌ、リヨン、カンヌ、トゥールーズ、ボルドー、トゥール、サンマロ、再びパリという行程です。列車での移動をメインにホテルはその都度取りながら、旅の目的は美味しいものを食べること!さあ出発です。